【プレスリリース】腸内細菌は宿主の食生活に遺伝子変異で適応する―無菌マウスと大腸菌を用いた人工共生系で明らかに―
概要
慶應義塾大学先端生命科学研究所に所属する慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程3年月見友哉と福田真嗣特任教授(順天堂大学大学院 医学研究科 細菌叢再生学講座特任教授・神奈川県立産業技術総合研究所 腸内環境デザイングループ グループリーダー・筑波大学医学医療系客員教授・JST ERATO深津共生進化機構プロジェクト副研究総括を併任)らの研究グループは、無菌マウス1)と大腸菌を用いた人工共生系2)において、腸内定着時に生じる大腸菌ゲノムの遺伝子変異は、宿主であるマウスの食餌の種類に依存して変化すること、およびこれらの変異株はマウス腸内の栄養素を効率的に利用する能力を高めることで、遺伝子変異のない大腸菌株よりもマウス腸内で優勢になることを明らかにしました。
本成果は、米国微生物学会が出版するオンライン学術誌「mSystems」に1月11日付(現地時間)で掲載されました。
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本研究成果のポイント
用語解説
1) 無菌マウス:実験用に飼育される、体内に細菌を保有しないマウス。無菌マウスに腸内細菌を移植することで、宿主であるマウスとその腸内細菌との関係を詳細に解析することができる。
2) 人工共生系:人工的に制御された環境で宿主と微生物を共生させた実験系。本研究における無菌マウスへの腸内細菌種の投与はその一例。
3) 大腸菌ミューテーター株:大腸菌(Escherichia coli)は、ヒトを含む哺乳類の腸内に棲息する細菌の一種。その中でも、遺伝子変異率が野生株よりも高い菌株をミューテーター株と呼称する。
4) 機能欠失型変異:塩基の挿入や欠損により遺伝子がコードするタンパク質の機能が失われる変異。タンパク質を構成するアミノ酸が変化しない変異や、変化してもタンパク質機能への影響が軽微な変異も存在する。
特記事項
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(課題番号:JP21J11019、JP22H03541)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(ERATO)深津共生進化機構プロジェクト(課題番号:JPMJER1902)、日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)(課題番号:23gm1010009)、糧食研究会、山形県及び鶴岡市、九州大学生体防御医学研究所の支援により実施されました。
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