プラスチックの破断面解析ー有機溶剤がプラスチックの破壊現象に及ぼす影響の検討ー

化学技術部
海老名
  • 外観観察
  • 高分子材料
  • #トラブル対策
  • #破面

 破壊形態を詳しく観察し、破損状況等の情報と併せて原因を探る手法を、破断面解析あるいはフラクトグラフィといいます。
 環境因子のひとつとして、有機溶剤がプラスチックの破壊現象に及ぼす影響についてご紹介します。

 応力存在下、有機溶剤などが共存すると、環境応力き裂あるいはソルベントクラック、ケミカルクラックと言われる割れが生じます。図1は、たわませたアクリル板にエタノールを滴下することによって生じた破断面です。鏡面が見られるのが環境応力き裂の破断面の特徴です。

図1 エタノールによるアクリル板の環境応力割れ

 また、有機溶剤への浸漬が、引張特性と破断面に及ぼす影響について検討しました。

 アクリル板のダンベル型試験片について引張試験を行うと、図2Aに示す、スティックスリップ状模様を呈する破断面が観察され、脆性破壊と推察されました。一方、アクリル板をエタノールに浸漬後、引張試験を行ったところ、図2Bの放射状模様を呈する破断面が観察され、延性破壊と推察されました。図2Cの引張試験の結果と併せると、硬くて脆いアクリルにエタノールが浸透することによって膨潤し、軟らかく粘りのある性質に変化したことが示唆されました。

 上記の実験から、応力と有機溶剤が同時に存在する時に起こる環境応力き裂と、有機溶剤浸漬品の引張による破壊とでは、破壊過程が異なり、それが破断面の違いに現れることが明らかになりました。

図2 引張試験の応力ーひずみ曲線と破断面の例

 破損トラブルが起きた時には、破断面を観察するだけでなく、万能試験機等により破壊試験を行い、再現の検討を行うことも有用です。
 プラスチックの破断面を詳細に観察することにより、破損原因の解明の一助となる場合があります。ご興味がありましたらお気軽にご相談ください。

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このページのご紹介内容は、依頼試験委託開発でご利用いただけます。

料金

NO. 項目 単位 料金
E2941 プラスチック製品の破断面写真撮影 写真1枚につき(E2940に適用) 2,970
E2940 プラスチック製品の破断面観察 1試料につき 29,150
E2942 プラスチック製品の破断面写真撮影(倍率変更) 写真1枚につき(E2941に適用) 1,430
E2943 プラスチック製品の外観撮影 写真1枚につき(E2940に適用) 1,430
E0011 走査電子顕微鏡写真撮影 5万倍以下 1試料1視野観察につき 21,120