2023年5月9日
EPMA、SEM–EDXによるピーク位置が近接している元素で構成された材料の定性分析
EPMA,SEM–EDXの特徴
固体材料表面に電子線を照射し、特性X線を計測することにより、固体表面の構成元素やその分布を知ることができます。
X線の検出方法の違いにより、波長分散型X線分光法であるEPMAとエネルギー分散型X線分光法のSEM–EDXがあり、それぞれ異なる特徴を有します。
まず、SEM–EDXは検出効率が高く、短時間で多元素を同時に分析できる利点があります。
これに対して、EPMAはエネルギー分解能と測定感度において優位性を示します。
ここでは、EPMAのエネルギー分解能について事例を紹介します。
ステンレス鋼の定性分析結果
両手法を比較した一例としてステンレス鋼の定性分析結果を図1に示します。SEM–EDXでは、ステンレス鋼中のMnやCoといった微量元素は、そのKα線が、主元素であるCrやFeのKβ線と重なるために検出が困難です。一方、EPMAは、エネルギー分解能が高いため、各元素のKα線とKβ線を分離した観測が可能です。
チタン酸バリウムの定性分析結果
セラミック積層コンデンサやスマートフォンなど、情報通信機器の小型化に欠かすことのできない材料であるチタン酸バリウムについて測定を行った例を図2に示します。この例ではTiとBaはピーク位置が近接しており、SEM–EDXのエネルギー分解能ではピークの分離が困難ですが、EPMAではピークが分離できています。
料金
NO. | 項目 | 単位 | 料金 |
---|---|---|---|
E2570 | 電子線マイクロアナライザ観測(FE-EPMA) | 1ヶ所につき | 29,370 |
E2580 | 表面観察(FE-EPMAによる) | 1ヶ所につき | 20,350 |
ご利用方法
依頼試験(KISTEC事業名:試験計測)、委託受託(KISTEC事業名:技術開発受託)で利用できます。
今回のEPMA,SEM–EDXによるピーク位置が近接している元素で構成された材料の定性分析の事例については、
EPMAは、局所領域の元素分析が可能なこと、金属、セラミックス、樹脂等、様々な材料を対象とすることができることから、鉄鋼・非鉄金属、自動車、電子部品・半導体、化学、資源エネルギー、地質分野など幅広い分野で活用されています。
以下のようなお悩み・課題の解決にご活用ください。
・製品の変色
・異物混入
・腐食
・接点不良
・めっき・塗膜の剥離
・破損など
故障解析で対応可能な内容は多岐にわたります。
【PRポイント】 当所では、フィールドエミッション(FE)電子銃を搭載したEPMA(FE-EPMA)が設置されております。従来のEPMAに使用されているW、LaB6電子銃に比べ、低加速電圧、高電流密度でプローブ径が絞れるため、より局所的な領域の分析が可能です。分析条件にもよりますが、空間分解能は通常のEPMAで1~3 μm、FE-EPMAで0.1~0.3 μm程度です。