2023年5月10日
EPMAによるスイッチ接点不具合品の面分析
面分析でわかること
EPMA(Electron Probe Micro Analysis)は試料に電子線を照射した際に発生する特性X線の波長を分光することによって試料表面の構成元素やその分布を分析する手法です。EPMAを用いた面分析により、元素分布を視覚的にわかりやすく濃淡で表現することが可能であり製品の変色や材料の偏析等の調査に力を発揮します。
また、当所が保有する装置は電界放射型(Field Emission : FE)の電子銃を備えるFE-EPMAであり、サブミクロンオーダー (試料の状態により、0.1–0.3 µm程度)の空間分解能を有し局所領域の解析に活用されます。以下に面分析を行った事例を紹介します。
車載用電装機器に使用されていたリレースイッチの接触不良が発生しました。
現品は、いわゆる5極リレーと呼ばれるものであり、2つの固定接点に挟まれるかたちで存在する可動接点の動きにより、回路の切り換えを行う機構になっています。
動作不良の状況から、ノーマルクローズ側の接点において導通を阻害する異物または被膜が存在している可能性が想定されました。
分析結果
接点はリベット型のものであり、ベース材料の銅(Cu)に接点材料の銀(Ag)がクラッドされています。導通不良品においては、図1のように円形状に茶色く曇った変色が見られました。そこで、EPMAを用いて変色箇所の面分析を行いました。
結果を図2に示します。変色箇所に対応して炭素、シリコン、酸素が広く分布しており、炭化物(カーボン)や酸化シリコンの堆積物が導通を阻害していることが明らかになりました。
接点不良をもたらす付着堆積物の発生要因としては、接点周辺の雰囲気ガスや粉塵等のコンタミによるものが多いです。酸化シリコンは、有機系シリコン化合物からのアウトガスであるシロキサンガスが接点開閉時のアーク熱によって分解・酸化されることにより生成します。また、炭化物は接点周囲の有機ガスや粉塵等が接点アークによって燃焼することにより生じます。これらが接触部およびその周囲に付着堆積することで接触不良が発生します。
不具合品における外観の特徴や分析結果から、本事例での接触不良の発生要因も、上記のコンタミよるものと推測されました。対策としては、接点周辺部に使用する部材をアウトガスが生じにくい材質に切り替えることや、アウトガスの発生源と接点部を遮断することが有効であると考えられます。
使用機器
料金
NO. | 項目 | 単位 | 料金 |
---|---|---|---|
E2570 | 電子線マイクロアナライザ観測(FE-EPMA) | 1ヶ所につき | 29,370 |
E2590 | 電子線マイクロアナライザ観測(FE-EPMA) 追加分析 | 1ヶ所につき(E2570, E2580に適用) | 9,130 |
ご利用方法
依頼試験(KISTEC事業名:試験計測)で利用できます。
今回のEPMAによるスイッチ接点不具合品の面分析の事例については、
EPMAは、局所領域の元素分析が可能なこと、金属、セラミックス、樹脂等、様々な材料を対象とすることができることから、鉄鋼・非鉄金属、自動車、電子部品・半導体、化学、資源エネルギー、地質分野など幅広い分野で活用されています。
以下のようなお悩み・課題の解決にご活用ください。
・製品の変色
・異物混入
・腐食
・接点不良
・めっき・塗膜の剥離
・破損など 故障解析で対応可能な内容は多岐にわたります。
【PRポイント】 当所では、フィールドエミッション(FE)電子銃を搭載したEPMA(FE-EPMA)が設置されております。従来のEPMAに使用されているW、LaB6電子銃に比べ、低加速電圧、高電流密度でプローブ径が絞れるため、より局所的な領域の分析が可能です。分析条件にもよりますが、空間分解能は通常のEPMAで1~3μm、FE-EPMAで0.1~0.3μm程度です。