2022年12月8日
XPSによる高分子材料の表面処理の分析
観察例
- ポリエチレン・ポリプロピレン(PE・PP)不織布の表面について
- 親水性コロナ処理の評価事例
使用機器
- X線光電子分光分析装置(XPS)
- アルバック・ファイ社 Quantera SXM
分析例
- PE・PP不織布の親水性コロナ処理表面の分析
- XPSワイドスキャンによる元素分析および簡易定量
コロナ処理あり試料は処理なし試料と比較して酸素が多く存在していることが分かりました。
XPSナロースキャン分析により、高分子材料表面の炭素が、どのような化学結合状態であるかわかります。
・XPSナロースキャンによる炭素スペクトル化学状態分析
コロナ処理あり試料と処理なし試料を比較し、処理有り試料には親水性を有する極性官能基が導入されていることがわかりました。
コロナ処理ありの炭素スペクトルピーク分離
ピーク分離結果
Energy (eV) | Chemical state | Area | %Area |
284.6 | C-C(H) | 17934 | 58.4 |
285.8 | C-OH | 7910 | 25.8 |
287.3 | C=O | 2884 | 9.4 |
288.9 | O=C-OH | 1990 | 6.5 |
炭素スペクトルのピーク分離処理により、各極性官能基の存在比率の評価ができます。
原理
試料表面にX線を照射するとX線に励起された原子から電子(光電子)が放出される。
照射するX線のエネルギーが一定なので、光電子の運動エネルギーを測定すれば電子の結合エネルギーが求められる。
Ekin =hv-Eb-Φ
Ekin | 放出された光電子の運動エネルギー |
hv | 入射したX線のエネルギー |
Eb | 放出された光電子の試料中での結合エネルギー |
Φ | 測定装置の仕事関数 |
内殻電子の結合エネルギーは原子によって固有の値を有するので、結合エネルギーを測定することによって元素の同定を行うことができる。
また、原子の化学結合状態が異なると結合エネルギーの値は微妙に変化する。変化した値を測定することによって、元素の化学結合状態分析を行うことができる。
光電子の運動エネルギーは小さく、深いところで発生した光電子は内部で吸収され外へ脱出することができないため、浅いところで発生した光電子のみが検出されることとなる。そこで、表面から数nmの深さまでのみの分析を行うことができる。