超長寿命形状記憶合金「ウルトラニチノール」の実用化に向けた熱処理工程開発

機械・材料技術部
海老名
  • 強度試験
  • 金属材料
  • #産学公連携事業化促進研究

東京工業大学、株式会社古河テクノマテリアル、KISTEC機械・材料技術部

 形状記憶合金には超弾性と形状記憶効果がありますが、実用合金はニチノールの超弾性を利用したものが大半であり、形状記憶効果については、疲労特性は優れるものの変形量が小さいR相変態を利用した用途に限られています。これは、形状記憶効果の特徴であるマルテンサイト相変態を利用した場合、繰り返し使用することで機能劣化が起きやすいことに原因があります。東京工業大学が開発した「ウルトラニチノール」は、この機能劣化が起きにくい非常に高い耐久性を持つ合金で、実用化に向けて鍛造割れを防ぐための熱処理工程の開発が求められています。

 本研究では、東京工業大学のウルトラニチノールに関する研究シーズとKISTECの熱間加工・材料評価技術、国内形状記憶合金事業トップシェアの(株)古河テクノマテリアルの合金製造技術を活用し事業化に向けた熱処理工程開発を行いました。令和3年度までに、準工業レベルにスケールアップさせたインゴットを作製し、インゴットから試料を切り出して熱処理することで、鍛造割れの原因となり得る析出物や銅の偏析を低減させる為に最適な熱処理条件を明らかにしました。

 最終年度の令和4年度は、熱処理前後の材料について様々な温度・ひずみ速度・雰囲気で圧縮試験を行って熱間鍛造条件の最適化を行い、本研究当初の目標である“総加工率50%でも割れない材料を得るために最適な熱処理工程”を明らかにすることができました。今回の結果を基に、事業化に向けた研究開発資金獲得のために令和5年5月のA-step(育成型)への申請を計画しています。

Cuに関するSEM-EDS結果と圧縮試験後の試料写真