電子技術部研究テーマ(令和5年度)

電子技術部
海老名
  • 半導体・実装
  • 電気・電子製品
  • #パワーデバイス
  • #電子・半導体

当所の研究職員が技術相談、依頼試験及び委託開発等の中小企業に対する支援を効果的に行うために技術資産の蓄積を目的として、令和5年度に取り組んだ研究テーマをアーカイブとしてご紹介します。

3次元積層実装に向けた高周波向けTEGに関する研究開発

近年、半導体集積回路の高密度化を進めるために、2.5次元あるいは3次元積層実装技術が求められている。当所ではそのような最先端の実装技術に対応するために、装置メーカー、材料メーカー、公設試、大学、産総研等の研究共同体を構築し、それぞれ得意な分野が異なる機関が協力して開発できる体制を整備している。この研究共同体で2.5次元および3次元積層実装を検証するために使用できるTEGチップ作製技術と高周波伝送特性の評価技術の構築が本研究のテーマであり、次世代半導体に向けた高周波評価用TEGチップの作製と提供を目指す。

パワー半導体デバイスの断面観察技術の検討

電力変換・制御を行うパワー半導体デバイスは、産業機器、電鉄車両、電気自動車など様々な分野に広く用いられており、脱炭素社会実現に向けて効率的なエネルギー利用を担うキーテクノロジーのひとつである。半導体素子と基板を接合する実装技術としてはんだ接合に替わって金属ナノ粒子を用いた焼結接合が適用され始めている。本研究では接合部の信頼性評価を想定し、断面観察試料作製手法の検討を行う。デバイスの構成材料は、半導体、接合材、基板金属やセラミックスといった硬さの異なる材料の複合体であるため、断面観察のために均一に研磨を行うことが難しい。適切な研磨条件を見出し、製品開発等において迅速な試験・評価に本研究の成果を活用することを目指す。

畜産業に対するマイクロ流体チップの応用開発

令和に入り、牛肉をはじめとする農産物の輸出額が伸びており、2022年の農林水産物・食品の輸出額は、過去最高の1兆4,148億円となり、2021年比では14.3%の増加、額では1,766億円の増加となった。そして、2023年2月の牛肉輸出は、数量は前年同月を39%、金額は前年同月を28%それぞれ上回り、和牛肉は重要な産業に成長している。しかしながら、和牛の受胎率は低下し続けている。そのため,マイクロ流体チップにより運動性に優れる精子を選別し,和牛の人工授精の成功率を上げることを目的とする。

電子線描画を用いた光学回折素子構造の試作

光学回折素子(DOE:Diffractive Optical Element)は光の回折を利用してレーザー光を所定のパターンに変える素子であり、電子線描画を利用した微細加工の開発対象のひとつして着目されている。光学回折素子用のレジストの厚みに分布をもつ3次元構造は通常の電子線描画でのパターン形成よりレジスト厚みの制御が必要な点で作製が難しくなるので、これを検討する。光学回折素子用のレジストの3次元構造は電子線描画装置を用いて多諧調的な描画を行って作製する。この3次元構造の作製の難易度が高いため、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面形状の評価を行い、電子線描画での作成条件を検討する。

環境調和型熱エネルギー変換材料の作製と電子輸送特性評価

過半数の国々が2050年のカーボンニュートラル実現を宣言し、化石燃料に依存する本邦においても環境低負荷なエネルギー自給率の向上と二酸化炭素排出量の削減は不可避の課題である。上記の課題解決に向けた方策の1つは、ユビキタス且つ膨大な未利用熱エネルギーの高効率な資源化である。本申請研究では、高移動度デバイスや冷熱利用熱電材料として有望な環境調和型組成のWeyl半金属候補材料の電子物性制御を目的とする。計算機シミュレーションと材料合成、電子輸送特性評価を駆使した相補的な研究手法により熱エネルギー変換材料に関わる基礎的研究を実施する。

KEC法における測定誤差要因に関する一検討(高シールド材)

電磁波を遮蔽するシールド等の新製品・新技術の開発において、高シールド材への期待が高まると予想される。しかしながら、高シールド材をKEC法で測定する場合には、微小電流領域の測定であるために、測定誤差が増大すると考えられる。本研究では、高シールド材をKEC法で測定する場合の測定誤差の増大に関するメカニズムについて検討する。

5Gを含む無線周波数帯域の電磁界分布可視化システムの開発

現在、携帯電話やWiFiなどマイクロ波帯域の電波を利用した無線通信システムが広く利用されており、今後さらに高速低遅延化が進展する。しかし、電波は目で見る事ができないため、通信がつながりにくい場所を特定することは難しく、場所によっては遅延が発生する可能性もある。本研究では、5Gを含む無線通信システムの通信環境における電波状況を確認するため、電磁界分布可視化システムを開発する。この可視化システムを利用することで、無線システムごとの電波状況を確認することができ、更に、電波状況を改善するための電磁波シールド材料や電波吸収体を施工した場合の効果ついても検証することができる。