量子時代のセキュリティを理解する
〜耐量子計算機暗号,高機能暗号〜

量子計算機時代の暗号技術の課題・最新動向に触れたい、基礎理論を学び直したいとお考えの研究者・技術者の皆様にお届けする講座です。
日時
令和7年 9月18日(木)、19日(金)
会場
対面、およびオンライン
【対面会場】かながわサイエンスパーク(KSP)内 会議室 (川崎市高津区坂戸3-2-1)
JR南武線「武蔵溝ノ口」・東急田園都市線「溝の口」下車
募集人員
20名程度
講師
國廣 昇 氏(筑波大学 システム情報系 情報工学域 教授)
安田雅哉 氏(立教大学 理学部 数学科 教授)
高島克幸 氏(早稲田大学 教育・総合科学学術院 教育学部 教授)
江村恵太 氏(金沢大学 理工研究域 電子情報通信学系 准教授)
本コースのねらい
暗号技術は、既に私たちの生活にすっかり溶けこみ、暗号なしでは、もはや生活することはできません。
今、広く利用されているRSA 暗号や楕円曲線暗号などの公開鍵暗号は、現代の暗号技術の基盤であるにもかかわらず、量子時代の到来により、瞬く間に解読されてしまう可能性があります。そのため、安全に使える暗号技術を準備しておくことが、情報通信技術の必須課題となっています。
しかし、暗号技術を議論する上で、安全性だけを気にするわけにはいきません。暗号化し、安全に情報を保持することだけがゴールではなく、暗号化した上で、その情報をいかに有効活用するかが重要です。それにも関わらず、労力をかけて集めた有用なデータでさえ、秘密にしてしまう事例も多く見られます。こうした状況に対して、データを暗号化したままなんらかの有用な計算ができる準同型暗号、秘匿計算などの高機能暗号は、応用技術として広がりつつあります。ビットコインを代表例とするブロックチェーン技術も暗号技術を基礎としたものであり、今後、さらにこの分野の応用・開発が加速していくことでしょう。
本講座では、書籍『暗号の理論と技術 量子時代のセキュリティ理解のために』(2024年,講談社) の2章,5章,6章, 9章を中心に講義します.耐量子計算機暗号を一通り理解することを目標に,格子の理論,量子計算機に対する暗号の脅威を理解したうえで,NISTによる標準化動向,標準化暗号について概観します.さらに,今後ますます利用が期待される高機能暗号についても説明します.
企業の方々が基礎から応用までの幅広く知識を習得することを目的とし、特に、独学ではキャッチアップすることが難しい最先端技術に関しても、わかりやすく解説します。
國廣 昇 氏
(筑波大学 システム情報系 情報工学域 教授)
受講料
2日受講
区 分 | 受講料 |
A 一般 | 38,000円 |
B KISTEC 会員 C 神奈川県内中小企業 | 30,400円 |
D C以外の神奈川県内企業 E 神奈川県内在住の個人の方 | 34,200円 |
1日受講
区分に関わらず | 24,000円 |
カリキュラム
9月18日(木)
10:00-10:30 | 全体概要(オリエンテーション)と暗号技術の基礎 本講座の紹介の後、 現代の暗号技術の理論と全体概要、 今後の展望について概説する。 | 國廣 昇 氏 (筑波大学 教授) |
10:30-12:30 | 量子計算機による暗号解読の基礎 量子アルゴリズムの中でもShor のアルゴリズムを紹介し、量子コンピュータと暗号の関係に関して概説する。 | 國廣 昇 氏 (筑波大学 教授) |
14:00-16:00 | 証明可能安全性と高機能暗号 暗号や署名と言った単純な機能だけでなく、暗号化したまま統計処理などの計算が可能である準同型暗号や、署名者の匿名性を担保するグループ署名などの高機能暗号が注目を集めている。この講義では、量子時代において活用が期待される高機能暗号を紹介するとともに、その安全性や実社会への応用事例なども含めて説明する。 | 江村 恵太 氏 (金沢大学 准教授) |
9月19日(金)
10:00-12:00 | 格子と格子暗号の基礎 量子計算機による解読にも耐性を持つ格子暗号とその安全性を支える格子問題について概説する。具体的には、格子がもつ基本性質と代表的な格子問題と求解法を説明すると共に、代表的な格子暗号方式を紹介する。 | 安田 雅哉 氏 (立教大学 教授) |
13:30-14:00 | NIST による耐量子計算機暗号の標準化動向 NIST による耐量子計算機暗号の標準化が進んでいる。 これまでの候補暗号選定の経緯および標準化の動向について紹介する。 | 國廣 昇 氏 (筑波大学 教授) |
14:00-16:00 | 耐量子計算機暗号 量子計算機でも解読できない暗号として格子暗号は代表的であるが、現在NIST により標準化が進められている格子暗号は、実用性を高めるために数学的に特殊な構造をもった格子に基づいて構成されている。その理解は標準格子暗号方式を実装する上でも必須の知識となっており、本講義では、標準化されたハッシュ関数署名と共に、構造付き格子に基づく格子暗号に関して技術説明を行う。 | 高島 克幸 氏 (早稲田大学 教授) |
ご受講の皆様に、講師の共著『暗号の理論と技術 量子時代のセキュリティ理解のために』(2024 年,講談社)
を進呈致します(お申込みお一人につき一冊)。講義内容の復習にお役立てください。
主催
神奈川県立産業技術総合研究所