革新的インダストリアルマルチスケールセンサプロジェクト

本プロジェクトでは、カーボンナノチューブを利用した大面積でフレキシブルなシート状の非破壊画像センサの開発を実施します。これまでカーボンナノチューブ素子による多波長検出可能な高感度センサを開発し、電磁波干渉の影響の考慮や干渉除去手法、画像構築手法の最適化などを進めてきました。さらに新たなセンサの構造や原理を探求し、非破壊画像検査の機能や範囲を拡張していくことで、様々な実際の現場で活用できる、より簡便な検査を実現し、社会の安全安心へ貢献することを目指しています。

期間

  • (戦略的研究シーズ育成事業)「非破壊画像分析スマートシートによる検査システム応用展開」 2022年4月~2024年3月
  • (有望シーズ展開事業)「革新的インダストリアルマルチスケールセンサ」プロジェクト 2024年4月~

実施場所

   中央大学後楽園キャンパス   東京都中央区春日

研究概要

近年、製品に要求される品質の高まりや、数十年前に建設されたインフラの寿命の問題などから、対象を壊さずに検査する非破壊検査の重要性が増しており、その市場は年々拡大しています。特に対象物を画像化する検査手法は、視覚的に分かりやすい形でより詳細な情報が得られることから、様々なシーンでの活用が期待されています。一方で、実際には、検査対象は微細なものから大型のものまであり、これらをマルチスケールで可視化する必要があるものの、統合的な分析は困難です。さらに、インフラ検査等では、狭いスペースや危険な場所など人が立ち入ることが難しい環境でも運用できる柔軟な検査技術が求められています。

 以上の背景から、「新たな材料・構造体による光の自由度制御とマルチスケール光分析」というコンセプトを元に、新奇なセンサの構造や原理を探求し、非破壊画像検査の機能や範囲を拡張していきます。これにより、様々な現場で活用できる検査を実現します。

図1 プロジェクトの概要図
形態自在な光センサ 光の自由度を制御する新たな構造体 環境や対象に制限のない計測を可能に 計測の自動化・無人化も目指す 新たな構造体の付加による光の自由度制御 より微細な光分析への拡張

研究内容

1) 形態自在センサによる柔軟な計測

 当研究室では、幅広い波長域で検出可能な広帯域光センサの開発を 行ってきました(図1)。本研究では、このセンサを高性能化・高機能化し、マルチスケール検査分析への応用を可能にするスマートシート(図2に概念図)を創出します。

図2 可視光では見えない対象物の非破壊画像検査の概念図

2) 構造体による光制御と微小光分析

 照射する光の空間的なサイズや偏光等を自在に制御する構造体の開発を行います(図3に一例)。電磁界シミュレーションにより、素子構造を検討し、構成する材料や形状を特定します。これは、特に 微小な光分析に貢献すると期待されます。

図3 光の自由度を制御する構造体の一例(シミュレーション結果)

3) 分光画像情報の解析技術とマルチスケール計測システムへの実装化

 電磁波計測による非破壊検査にとって、測定した分光画像データからの 意味のある情報を得ることは大変重要です。この目的のため、電磁波の散乱・ 反射・干渉などの振る舞いに着目した解析技術を開発します(図4に一例)。 対象物の状態や測定環境も考慮し、現実の状況に即したモデルを構築します。 最終的には、用途に合わせて各要素技術を最適化し、マルチスケールで対応 可能な計測システムとして実装化します。

図4 分光画像解析技術(画像のボケ除去)の一例

研究員一覧 (氏名 /職制/ 専門分野/ 本務所属機関)

  • 河野 行雄 /プロジェクトリーダー / 中央大学
  • 大川 拓樹/ 常勤研究員
  • 佐世 美帆/常勤準研究員