超分子ペプチドを用いた 脳梗塞の再生医療プロジェクト
損傷した脳の潜在的再生能力を発揮させる超分子ペプチド医薬を用いて、脳梗塞発症3日後から1週間後の亜急性期かつ重度の患者に対する新規治療法への展開を目指します。
期間
- (戦略的研究シーズ育成事業)「脳梗塞治療のためのスキャフォールド材料」 2019年4月~2021年3月
- (有望シーズ展開事業)「超分子ペプチドを用いた脳梗塞の再生医療」プロジェクト 2021年4月~
実施場所
かながわサイエンスパーク(KSP)東棟
神奈川県川崎市高津区坂戸
研究概要
国内死因の第3位となっている脳血管障害のうち、脳梗塞は全体の75%以上を占め、一命をとりとめた場合でも後遺症が残る場合が多く、我が国の「寝たきり」原因の25%を占めています。脳機能発揮の中心的役割を担う神経細胞(ニューロン)は、皮膚や肝臓の細胞とは異なり増殖能に乏しく、脳組織がほとんど再生しないため、手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ることが多く、患者や家族のQOLを著しく低下させる社会問題となっています。
一方、医師の側にも悩みがあります。脳梗塞発症後4.5時間以内であれば血栓溶解治療薬を投与できますが、2%程度の患者にしか治療効果が得られていません。発症8時間以上の患者に対しては安定期まで見守ることしかできず、医師もまた、亜急性‐慢性期の重度脳梗塞患者に効果のある何らかの治療法を求めているのが現状です。
戦略的研究シーズ育成事業(「脳梗塞治療のためのスキャフォールド材料」)では、生体適合性が高く低侵襲性である超分子ペプチドと超分子ペプチドから徐放する修飾増殖因子とを混合し、亜急性期の脳梗塞モデルマウスに脳内単回投与して神経機能が改善することを見出しました。
本プロジェクトでは、この超分子ペプチドを革新的な医薬品へと開花させるため、神奈川県が掲げる「ヘルスケア・ニューフロンティア」事業の一角としても研究を進めていきます。
研究内容
1. 脳梗塞患者に対する超分子ペプチド医薬の開発
プロジェクトリーダーらが開発した超分子ペプチド医薬を実際の臨床現場で使用できるようにするためには、有効性や安全性などの検討を十分に行っていく必要があります。
非臨床POC(臨床試験前にある程度の有効性と安全性が示された状態)が得られる段階へと進めるため、プロジェクトにおいて
・投与時期や投与方法、投与量の確定とそれに適した超分子ペプチドの設計
・損傷脳再生メカニズムの解明
・製造方法・製造手段の検討や体制構築等に取り組みます。
2. 超分子ペプチドのプラットフォーム技術化
超分子ペプチド医薬は脳梗塞だけではなく、神経細胞が関わる様々な疾患に対応できる可能性があります。
プロジェクトでは、超分子ペプチドの改変などを検討し、臨床現場でのニーズを反映した超分子ペプチドのプラットフォーム技術化を進めていきます。